両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信
皆さん、両備グループにようこそ、ご入社を心から歓迎します。
皆さんは2019年に始まった世界的なパンデミック・新型コロナウイルスが蔓延している最中に入学し、対面での学校教育がなかなかできない不自由な環境が続き、リモートでの学習やゼミ活動、クラブ活動を強いられて学生生活を思い切りエンジョイすることができなかったかもしれません。
また、コロナ禍の人流制限が大幅に緩和されたにもかかわらず、ロシアのウクライナへの侵攻やイスラエルとハマスとの宗教戦争など世界は今、大きな人道的危機に陥っていますし、世界的な天変地異が続出して今年の元旦に発生した能登半島地震のような災害が多発しています。
これらのことは本当に心を痛める問題ですが、滅入ってしまってマイナスに目が向きすぎるあまり、生成AIやロボットなどの新しいプラスの芽が出ていることを忘れてはなりません。
何にもまして日常の普通の生活、安全・安心の自由な暮らしが最も素晴らしいということを経験したことは人生にとって大きいと思います。
それらのマイナス事項をむしろ反面教師としてバネにして、人間性を磨きこれから始まる社会人生活で思い切り学び、思い切りエンジョイしていただきたいと思います。
まず、皆さんにお話ししたいのは「社会人」とは何だろうということです。実は社会人という言葉は日本にしかありません。社会人と言っても具体的に人間では分かりにくいですが、猫を見てみるとよく分かります。
両備グループでは現在、たま駅長に代表される猫社員が和歌山電鐵に2名(匹)、岡山電気軌道に3名(匹)、夢二郷土美術館に1名(匹)の国内に計6名(匹)と両備トランスポートのベトナムに1名(匹)の合計7名(匹)が元気に働いています。これは世界でも珍しいことで、ある研究者がたま駅長の働いている姿を見て、「任せれば猫も働く両備グループ」と全国に紹介してくれました。
親猫は、子猫を可愛がって手塩にかけて守り育てますが、子猫が育ち1年も経たないうちに親猫は鬼のようになって、咬んだり蹴ったりして子猫を自分の縄張りから追い出します。追い出された子猫は、親猫を慕ってニャーニャー鳴いて親の近くに戻ろうとしますが、親猫はさらに激しく威嚇して追い出します。ついに、親猫に嫌われたとトボトボと去って行って、お腹が空いて、空いて死にそうになって自ら餌を取った時に初めて猫は一人前の成猫になるのです。自から餌を取らず、与えてもらう飼い猫は、一生、成猫にはなれないそうです。
つまり、学生時代までのように親に養ってもらうのではなく、自ら稼いで自分の生活を支えることが一人前の「社会人」になるということなのです。
さて、では日本でいう社会人とは一体、世界とどこが違うのでしょうか?
英語では「worker=労働者」です。そして、欧米では「賃金は労働の対価であり、忍耐の対価」だという考え方をしています。日本では、欧米の「自分のために働く」という考え方に対して、「はた=端、人、側」 を「らく=楽」にすることが「はたらく=働く」という文字の意味であり、日本の「社会人」には、社会の一員になって「はた=人」を「楽」にするという意味が込められているのです。
欧米型のように我慢してイヤイヤ働いてお給料をいただくなんて嫌ですよね。嫌々働いていると思うと「働かされ感」がありますが、みんなを楽にしてあげようと思って働くと、自ら働いてる感がして楽しくなってくるし、仕事の目的ができていろいろキャリアアップしていこう!というやる気が出てきます。「働く」は人偏に動くと書きますが、単に人が動いても働いたことにはなりません。「端=人」や「社会」のために動けば、「はたらく=働く」ということになるのです。
私たちは「経済」という世界で働く社会人ですが、経済とは「経世済民」から創られた言葉で「経世」とは「世を収める」、「済民」は「民の苦しみを救う」という意味で、まさに「はたらく=はたを楽にする」という意味です。
両備グループの歴史は、まさに変化への挑戦の歴史です。
両備グループのルーツである西大寺鐵道が路線にほぼ平行して走る旧国鉄の赤穂線の敷設で岐路に立たされた際、先輩たちは輸送力でもスピードでも快適性でも軽便鉄道では敵わないといち早く分析し、軽便鉄道を廃業して当時最先端の輸送手段だったバス事業への転換で次代をかけました。そして誕生した両備バスは、マイカー時代の到来で公共交通が厳しい時代になると、いち早く旧両備運輸とともに両備ホールディングスに改組し両備システムズなどとともに旗艦をバトンタッチし、両備グループ(T&T部門、ICT部門、くらしづくり部門、まちづくり部門、社会貢献部門)という今日の生活総合産業グループへと進化してきました。常に時代の問題点を先取りして「先憂後楽」で素早く変革することが両備のDNAなのです。
かつては、儲けのあるコアビジネスだけを「専業特化」するという経営がもてはやされた時期がありますが、専業の多くの企業が時代の変化に対応できず倒れて行きました。事業を多岐にわたり分散することでグループ全体のリスクを分散し、利益や効率一辺倒ではなく、思いやりのある「人のため」「社会のため」になる人間総合産業として、人に必要な仕事をすることが、結果としてリスクを分散し、末永く企業の価値を高めると言えるでしょう。
企業活動エリアも分散・拡大し、岡山の一都市である旧西大寺市から岡山県全体、岡山県から日本全国、そして、日本からベトナムやミャンマー、ラオス等へと国際化を進め、日本の成長力の弱さを補い、進化し続けています。
このコロナ禍での経営危機を乗り切るだけではなく「災い転じて福となす」で、逆境の中で人流の影響を大きく受ける事業であるバス、タクシー、旅客船そして観光部門の大赤字を支えつつ歴史上はじめて100億円超えの経常利益を上げて、全部門の社員の皆さんに特別賞与を支給して全社員で喜び合えたのは快挙でしょう。
さらに、企業の危機管理能力や安全思想、衛生思想を磨き、強い経営体質へと変化し続けています。
創立以来114年もの間、両備グループが進化し続けることができるのは、両備ならではの経営のノウハウがあるからです。
その中心になるのが、経営理念の「忠恕=真心からの思いやり」です。どんな時代でも、誰にでも常に思いやりを持つことが時代や社会が変化しても支持していただけるベースです。
なぜ、創業者である松田与三郎翁が大事にしていた「忠恕」を創立100周年の2010年になって、改めて両備グループの経営理念として前面に出してきたのか?です。
21世紀はAIが進み、世の中に当たり前にロボットがある時代になると、逆にこの21世紀で最も失われると思われるものは「人間の心」であり、「忠恕=真心からの思いやり」と「人とのふれあい」なのです。実は失われていくものこそが価値が増していくのが経済原則、いわゆる稀少性です。両備はこの失われていく「思いやり」を稀少なものとして持ち続けるために、敢えて「忠恕」を経営方針にすることで、他社では真似のできない「思いやり」の経営でお客様への付加価値を生み出していこうと思っています。
そして、さらにこの思いやりを展開して、経営方針は、
- 社会への思いやりとして「社会正義」
ウクライナやパレスチナの戦争を見ていたら、それらの社会の悲惨さがよく分かるでしょう。企業は自由と平和な社会があってこそ繁栄でき、その中で時代にあわせて変化し続けることができた企業のみが生き残ると言えるでしょう。しっかりした社会貢献へのベースは雇用維持と納税等であり、安定した社会づくりへの貢献が大事です。また、自由と平和は民主主義によって達成されるので、選挙権は18歳以上ですから必ず選挙に参加することが大事です。
社会正義と言えば、両備グループでは猫の駅長で有名になった和歌山電鐵や、中国バスや井笠鉄道を再建し、方々現行制度では全国の地域公共交通の多くは失われていく危機感から再建活動を通じて地域公共交通活性化再生法や交通政策基本法の成立に携わり、(一財)地域公共交通総合研究所を設立し、補助金制度に加え公設民営や公設民託の制度化を図ってきました。これらの活動も社会正義の経営方針によるもので、公共交通は「自分さえよければ」という事業と異なり「交通ネットワーク」で成り立っている産業ですから、業界の正常化に努力してきましたが、お蔭さまで国を挙げて地域公共交通を見直す大きなうねりに変わってきたと言えるでしょう。
- お客様への思いやりとして「お客様第一」
また、我々のお給料を払ってくださっているのはお客様であり、常に「お客様第一」で物事を考える癖をつけてください。
③ 社員への思いやりとして「社員の幸せ」
両備グループの真骨頂は、社会のため、お客様のために頑張って、結果として社員が幸せにならなければならないという、企業目的が「社員の幸せ」にあるということです。
多くの企業が目的として利益を上げて「株主への配当」と言っていますが、もちろん株主への配当は重要ですが、株主と同等以上に大事なステークホルダーは働いている社員の皆さんたちです。皆さんの働きがあってこそ企業活動が円滑にできるのです。
両備グループは規模別、企業業績別に松竹梅に評価して頑張った企業の社員の皆さんには決算賞与が第三の賞与として支給されることが特長です。そして、企業のCOOはじめ経営幹部はこの決算賞与が払えるように頑張ることが一つの大きな使命です。
これらの経営理念と経営方針を基にして経営が行われますが、両備グループならではの経営の特長は、
1.信託経営
両備グループの企業は社会の公器として社会から信託を受けているという考えと、その公器の経営の執行はCOOに信託するという考え方です。皆さんの会社やカンパニーのCOOが執行の最高責任者であり、企業は決して私物化せず、善良に経営管理されるように信託されています。
また両備グループの各社は親会社・子会社の関係ではなく、それぞれが独立した企業として平等です。その平等性のために会長、副会長、社長が一緒なのです。
2.労使“強存強栄”思想
両備グループの経営理念と経営方針に従って、労使それぞれが目的達成のためにお互いに対等に強い存在で、立場の違いを尊重し認め合うとともに、お互いが繁栄できるよう労使関係を大事にしている、いわば共同経営のパートナーであるということです。他の私鉄グループとは異なる発展ができたのも、この労使“強存強栄”思想のお蔭だと思っています。
3.行動規範
そして昨今、両備グループの発展にドライブがかかってきている事由に「行動規範」があります。
実は、企業が成長するキャスティングボードは「すぐやるか、すぐやらないか」という意思決定と行動のスピードにかかっているのです。「知行合一=良いと思うことは必ず実行する」、すなわち「すぐやる・必ずやる・出来るまでやる」という行動規範と「即断即決、三日の原則」が素早い判断とスピード感ある行動として素晴らしい結果を創り出しています。
4.社員の評価基準が明確でキャリアアップ
また、皆さんを評価する基準が分かりやすいことも大事で、そこに「個人の幸せの方程式=健康×能力×やる気+夢」という方程式の一つ一つの項目が大事であると明確化しています。
まず、①人間は健康第一、その上に②能力を磨き、③やる気を発揮することが大事で、夢を持って行動することが皆さんの幸せに通じるのです。いくら健康が2人前で、能力が高く3人前でも、やる気が0なら2×3×0でイコール「ゼロ」なのです。
幸せ感や夢を持っている人は、そうでない人に比べて想像力が3倍、生産性や売り上げが3割以上アップし、健康でうつ病になりにくいという研究があります。
そして、健康面は「両備健康づくりセンター」が、能力の開発は「両備グループヒューマントレジャーセンター」が皆さんをバックアップして、両備グループは教育産業かと言われるぐらい「企業即教育体」として、健康維持や能力開発、資格を得るプログラム等が充実していますから、大いに自分を磨いてください。
一般的には新卒(入社)から3年間の離職率が3~4割と極めて高く、これでは社員の皆さんも会社も幸せにはなりません。両備グループは社員の幸せが目的で、それには長期雇用でキャリアアップして、安心して家庭をつくり子どもたちを生み育てていけなければ少子高齢化の日本の社会は滅びてしまいます。
コロナ禍で少し苦労しましたが、両備グループは新卒者の定着率が良いと言われています。新入社員の定着率が上がった一つの要因は、私と皆さんとの3つの約束を皆さんが守ってくれているからだと思っています。
第一の約束は、「思いやりを持つ」ということです。私は皆さんに「忠恕」の心が持てそうになかったら、両備グループを希望しない方が良いですよ、とはっきり申し上げていますし、最近では就業規則にも明記されて、理念だけではなく、雇用上の約束という強いものになっています。
思いやりとは、「相手の立場で考えること」が大事で、忠恕という文字は両備グループの創業者である松田与三郎翁の戒名の一部にあり、その戒名を平たく読み解けば、「空よりも高く、海よりも深く、真心からの思いやりを一生貫いた男です」との意で、まさに両備グループの理念をダビンチコードのように刷り込んであったのです。
第二の約束は、「3年の我慢」です。「桃栗三年、柿八年」、また「石の上にも三年」と言うように、初心を忘れず、いろいろなことがあっても3年間は辛抱してください。その代わり、両備グループは必ず3年で一人前になれるよう皆さんを育てあげます。
一般的に、すぐ辞めてしまう原因としては、
・些細なことで叱られた
・思ったような仕事でなく、やる気を失った
・上司や同僚と良い人間関係が結べない
ということのようです。もちろん、不安もあるし、失敗して叱られることもあるでしょうが、3年間は叱られることが仕事だと思ってください。
昨年から幹部の皆さんには「誉め上手講座」を受講してもらっています。皆さんは注意されると叱られたと言いますが、誉められるだけでは人間は成長しません。五日市剛さんという詩人が、「失敗と書いて経験と読む」と言っていますが、まさにその通りです。失敗して叱られたら、「有難うございました」と言える心の広さと逞しさを持ってください。
また、社会人で一番大事なことは、職場の人間関係を築くことで、まず挨拶から始めよ!です。この挨拶という字に答えが込められています。挨拶とは、心を開くという意味で、まず自分から心を開いて飛び込まなければ、挨拶にはなりません。
両備グループの場合は、これから一年間、皆さん方のお兄さん、お姉さん的な年代の先輩が指導員として、日々サポートしてくれます。皆さんも環境が変わって、仕事等で悩むことがあるでしょうが、指導員となった先輩がそれを親身に聞いてくれますので、何でも隠し事をせずに相談してみてください。必ず皆さんに正しい方向と対処の仕方を教えてくれるでしょう。
第三の約束は、「ご両親やご家族、先生方への感謝の念の発揮」です。まず、皆さんに実践してもらいたいのは、皆さんをここまで育ててくださったご両親やご家族、先生方にお礼を言って欲しいということです。
今日、帰ってから、また電話でもメールでもLINEでも結構ですから、「今日までありがとうございました。これから社会人として頑張ってやっていきますから、安心してください」と感謝の気持ちを伝えてもらいたいのです。併せて、コロナ禍後でも「両備グループは大丈夫だよ」とご両親に伝えて安心してもらってください。
両備グループでは、まず「良き社員」の前に、「良き息子」であり「良き娘」であって欲しいと思います。今までお世話になったご両親にお礼の言葉が言えなければ、見も知らぬお客様に思いやりの気持ちなど持てるはずがありません。
今日は皆さんに素晴らしく楽しいプレゼントをします。新入社員の皆さん全員に「両備フレッシュパスポート」を差し上げます。和歌山電鐵の「たま電車ミュージアム号」や両備バス、岡山電気軌道の楽しいバスと電車たちや、神戸ベイクルーズの御座船「安宅丸」、国際両備フェリーの「おりんぴあどりーむ せと」をはじめとする小豆島航路のフェリーたち、今年は竹久夢二の生誕140年の記念年で全国巡回展も予定されている夢二郷土美術館や夢二生家記念館・少年山荘の入館券、ひるぜん塩釜キャンピングヴィレッジやこの「杜の街グレース」等々、両備グループが実現した夢の数々にご家族や友人たちと一緒に触れてみてください。
両備ハッピーライフプロジェクトの諸々の福利厚生の社員サービスとともに、まず、皆さんやご家族の皆さん方に両備グループの様々な商品やサービスを知ってもらい、ファンになってもらうことが肝心で、自分がファンになって初めて皆さんがお客様に両備グループを心からお勧めできるようになるでしょう。
「売り上げなくして会社なし」というように、皆さんは両備グループの社員として一人ひとりが「全員セールス」する商人(あきんど)であることが企業永続の大事なポイントの一つなのです。
「忠恕=真心からの思いやり」で「より良く働き、より良く生きよう!」
心和むニュースと言えば大谷選手の活躍ですが、野球では昨年の夏、私の母校の慶應義塾高等学校が甲子園で107年ぶりに優勝しました。今までの甲子園では丸坊主で決死の覚悟の熱き戦いだった高校野球のイメージが、普通の髪形で自由にリラックスして、エラーしてもニコニコして自ら考えながら野球をする姿を見て、「エンジョイ・ベースボール」で時代は変わったなと思いました。
私も大学の体育会でグライダーに乗っていましたが、とにかく厳しい「陸トレ」でこんなに筋肉を鍛えて何の役に立つのかと思うくらいのハードで規律厳しく根性を鍛えるまさに心技体の体育会精神から現在は大きく変わり、必要なところに力をつけて、必要な時に力を発揮するという効率的な練習とプレーで、まさしく大きく進化しているなと感じました。
今日から皆さんは「両備社員」です。
大いに「真心からの思いやり」を発揮して、社会のため、お客様のため、そして働く仲間のために「より良く働き」「より良く生きる」で生きる喜びを感じ、両備グループというフィールドで「エンジョイ・ワーク、エンジョイ・ライフ」の素晴らしい人生を謳歌してください。
両備グループ