夢二郷土美術館 館長
小嶋光信
初めての「夢二のふるさとフォトコンテスト」は、スマホの写真でもオーケーでメール添付でプリントの必要がないという気楽な感じで応募していただこうという企画でした。
果たして多くの応募をしてくださるかみんなハラハラドキドキでしたが、小学生からセミプロの腕前の方まで220点もの本当に多彩な写真の応募がありました。
夢二が愛した郷土岡山をいろいろな観点から捉えた写真は、本当に甲乙つけがたい作品ばかりでした。審査を担当したのは写真の研究者である岡山県立大学の北山先生と武久瀬戸内市長と私の三人です。
最優秀賞は福山市の写真愛好家が撮影した「旭川に願いを」と題した作品で、全員賛成で選びました。
後楽園の幻想庭園の催しで、旭川の欄干に夢二絵をライトアップした時の一枚で、暮れなずむ空が赤く染まり、コバルト色の空を背景に欄干の夢二絵が浮き出ていました。暗くなった旭川の水面に街路灯が真珠のように光っている、狙っても撮れない絶妙な構図とタイミングの作品で、思わず唸りました。フォトコンテストの写真を撮ろうと福山から来て、美術館や夢二生家などアングルを探していて、この情景に出会ったということでした。まさにセレンディピティに恵まれた作品でした。
館長賞の作品は「夢二電車くろ」で、岡山市の小橋あたりと思いますが、一日中車や自転車が行き交う中に2往復しかしないこの生誕130年を記念した「KURO×夢二電車」を粘り強く魚眼レンズで捉えた一枚で、見事に電車の先頭の湾曲した構図が、まさに生き生きとして走る電車として写されていました。
偶然にジャストタイミングに捉えた一枚の写真と、粘り強く待ち続けて思う構図で捉えた一枚と、両作品のコントラストが大変面白く感じました。
武久瀬戸内市長賞は、「朝焼けの千町川」という夢二のふるさとの作品で、豊かな千町平野を流れる川面の朝もやが薄赤く焼けた幻想的で、いかにも夢二のふるさとと言える一枚でした。
夢二の生家や宵待草や椿の花など楽しい夢二らしい作品達が、誇らしげに夢二のふるさとを語っていました。