夢二郷土美術館
館長 小嶋光信
郷土岡山が生んだマルチアーティストである竹久夢二の芸術を子ども達に「郷土の誇り」として受け継いでもらいたい!という思いから、小嶋ひろみ館長代理の発案で2011年に「こども夢二新聞」が生まれ、その応募者の中から募集して始まった「こども学芸員」も今2021年で第10期を迎えることになりました。
「継続は力なり」で、第1期のときから参加してくれているメンバーも早や大学4年生となり、今年も11名の皆さんを任命しました。
いずれ、こども学芸員の皆さんも大人になり、そのお子さん達が新しい「こども学芸員」に応募してくれる日も遠くないのかもしれません。そう思うと、創設して良かったと嬉しくなります。
夢二郷土美術館が特に「こども」達に力を入れているのは、勿論、次の時代に夢二の語り部として夢二芸術を継承していってほしいということもありますが、夢二の作品は「こども」の目を通してみると新しい発見や感覚が生まれてくることが多いということがあります。
「大正ロマン」の旗手でもある夢二は、はじめ詩人を志しましたが、詩人では食べていけないため「心の詩を描く」ということで絵の世界に入り、一世を風靡する「夢二式美人」に代表される大正ロマンを華開かせた一人として有名です。
彼の作品のバックグラウンドには子どもの頃に優しいお母さんとお姉さんに可愛がられて育った楽しかった故郷での思い出があるのです。
「こども心」に刻まれた、母や姉への思慕の念や家族に囲まれて過ごした幸せな少年時代の思い出を、夢二は生涯忘れず作品の随所に込めています。
夢二作品は、誰しもが心ひそかに持っているこの「こどもの心」と「乙女の心」から見てみることが一番理解できるのではないかと思います。
その二つの心を持っているのが、まさに「こども」達で、夢二の作品から新しいヒントや発見が生まれてきています。
「こども学芸員」の任期はこの4月からの1年間ですが、参加無料の上、研修や実習への参加をはじめ、期間中はIDで夢二郷土美術館へ自由に研究に訪れることができます。
また、10周年を記念して年7回のワークショップで学び、12月から開催予定の「松田基コレクション 夢二名品展」にも参加していただきます。10周年記念の図録刊行や冬の特別展示の準備なども楽しい思い出になると思います。
夢二郷土美術館の「こども学芸員」制度により、これからのこども達が身に付けなくてはならない個性として、文化性が豊かで、プレゼンテーション能力を身に付けた、大いに地域に誇りを持った岡山っ子に育ってもらいたいと願っています。