国際両備フェリー
社長 小嶋光信
2020年6月22日に起工した国際両備フェリーの1,250総トン型新造船「第十一こくさい丸」が4月11日、大三島の藤原造船所での厳かなる神事の後、国際両備フェリーの陸員・北川さんによる支綱切断で無事に進水し、式典を終えました。
通常なら進水式は旅客船会社や地元のみなさんにもお声がけして盛大に行なうのですが、今はコロナ禍中でもあり、ごく内輪で、また恒例の餅投げなどはせずに粛々と催行しました。
この時期の進水式は強風や雨など天候が心配なのですが、気持ちの良い快晴日で、風も3メートルくらいと、素晴らしい進水式となりました。
今回の「第十一こくさい丸」は国際フェリーと両備フェリーの合併後の第一船目でもあり、また池田―高松航路の主船です。
国際フェリーの創業者である故・片山鹿之助さんの思いのままに造っていただこうということで、片山鹿之助さんを建造のトップとして椎木常務と小嶋光浩取締役がサブにつき、国際フェリーの船長や機関長をはじめ船員と陸員全員がチームとなり、知恵を出しあいながらの思いのこもった新造フェリーが完成しました。
このフェリーは、通称「キリン」のフェリーが今年建造20年目を迎えるために代替え建造されることになったもので、コロナ禍ではありましたが、地元住民の皆さんの生活航路維持のためにも予定通り建造を進めることにしました。
国際フェリーの船は真っ赤なフェリーがあったり、大きな「キリン」や「パンダ」がついていたりとお客様や子ども達に遠くからでも国際フェリーの船だとわかるように工夫されています。
今回の新造にあたっては、片山さんが手書きのポンチ絵を見せてくれて、「今回は子どもを連れて高く鼻を上にあげている“ぞうさん”にしたい」との想いを語られました。私は、国際フェリーの船は「片山さんの思いの詰まった船」と心に決めていましたので、それで賛成ですと言ってスタートしました。この船は片山さんと、新造船チームに任せて、私は一切口出ししませんでした。
思えば40数年前、私が旅客船業界に入った当時すでに片山さんは大先輩でしたが、同じように小豆島の航路を守る同志として、またお互いに魅力のある船を創るアイデアの良きライバルとしてどのような船を創るか、楽しい議論をした仲間でした。
両備フェリーの「岡山―土庄」航路は、どちらかというと生活航路というより観光航路のウェイトが大きく、集客に厳しい航路ですから、移動目的以上に如何に船旅を楽しく「乗りたい船」を創るかが建造のポイントになります。それが両備型の「客船フェリー」という概念です。
一方、国際フェリーの「池田―高松」航路は生活航路の色彩が強い航路で、如何にコストを下げて効率的な運航を維持するかが重視されます。
このそれぞれの船の造り方の違いで、お互いの思いをお互いに重視しながら侃々諤々良く話し合ったものです。
従って、私が口を出せば、ともすれば観光航路的感覚で船づくりを見てしまうので、今回は片山さんにお任せしました。少しでも片山さんのコンセプトを楽しくするということで、私からは子どもの「ぞうさん」のメリーゴーランドとブランコを船のデッキに設置するようプレゼントしました。
片山さんが昨年急逝され、ともに進水式のこの日を喜び合えなかったことは誠に残念でしたが、春には珍しい穏やかな快晴のお天気日和は、きっと片山さんが祝福してくれているお蔭かなと思っています。その気持ちを込めて「第十一こくさい丸」の愛称は「ゾウさん号」とすることにしました。
これから「ゾウさん号」は艤装を終えて、7月中旬には皆様にお披露目することができるとい思います。乞う、ご期待!