(一財)地域公共交通総合研究所
理事長 小嶋光信
国民一人あたり10万円の支給で13兆円は、言いたくはないですが、10万円配っても新型コロナ感染は収束しません。全く別問題です。緊急度合いから考えて国民が願うことはただ一つ、新型コロナの感染拡大が収まり平常の穏やかな生活に戻ることでしょう。お金を持ったら一杯やりに行こうとか、パチンコするか等の愚かな行動を誘うかもしれません。勿論お金がもらえることは喜ぶでしょうが、国民も賢いですからそのお金以上に望んでいるのは、収束が期待できるメリハリが効いた国と地方自治体の思い切った短期収束戦略の実行でしょう。
今すぐやることは、
1. 9大都市の中心部や歓楽街でのライブ、ナイトクラブや酒を提供するところ、パチンコ屋やイベントなど3密が懸念されるところに休業補償をうって3週間営業を止めること。休業補償が世界で例がないというなら日本で例を作って効果を出せば世界が真似るでしょう。
2. 9大都市の中心部の企業へテレワークや働き方改革を進めて社員の2割出勤を3週間自粛行為として協力要請すること。2割出勤が無理なら、時差出勤で2割ぐらいになるように協力してもらう。
3. これらの都市から他都市への緊急以外の移動を3週間制限すること。
4. 医療崩壊を防ぐ最も大事なことは感染拡大を抑えることであり、それ以外の医療の緊急策は日本の優秀な医学界が中心になり9大都市と感染の少ない地域との医療連携、相互補完システムをつくること。
5.生活支援は地方自治体に新型コロナ緊急生活保護の権限と資金を与えて10万円を支給すること。
などの思い切った手を打たねば短期収束はありえません。
東京、横浜、名古屋、京都、新大阪、新神戸、博多での新幹線の乗り降りを緊急に制限する、それらの駅への空路の行き来を制限し、それらの都市への高速バスも休業要請し、高速道路もそれらの都市への出入りを制限して自粛させるなど地方生活交通を維持しつつ思い切った交通制限政策も必要です。
それと国は緊急事態宣言の仕組みを創っているので、緊急事態宣言を出すか出さないかは地域の実情を知っている地方自治体に任せて、国はその対策の資金を用意して迅速な対応を図るべきです。国には細かい地域の実情は見えてないので、国と地方自治体の役割分担をはっきりして、東京都での議論のように地方の判断を中央が抑えることは地方自治の精神からも好ましくないでしょう。全国には緊急事態となっている大都市もありますし、軽い自粛要請で良い地域など様々な状態が混雑しているのが現況です。それを一律にしてしまえば地方の経済と生活まで破壊をしてしまいます。
医療崩壊の前に大感染地域を食い止めて、そのうえに医療への支援と上記9大都市の対策とこれだけやっても1兆円もかかりません。13兆円の資金があるなら、まずは新型コロナ感染を早期収束させることに最大限の活用を図るべきです。各地方自治体に住民一人あたり10万円に相当する特別交付金を設定してあげれば、それぞれの地域が実情に合った早急な手が打てるでしょう。前述の新型コロナ感染予防のための思い切った1兆円対策と並行して行えば各地方自治体は活き活きと問題解決を図るはずです。
私は井笠鉄道がたった19日で廃業した事件ともいうべき状況で、国と地域の要請で再建に携わりましたが、地方自治体の皆さんの底力は素晴らしいものでした。緊急性は何かを見極めることがポイントです。国会で議論するべきこと、地方に任せることを明確にして、地方自治体が緊急に動ける制度と、地方がそれを執行する資金を渡して、即断即決で進めて行くことが新型コロナ感染の早期収束には必要です。
このまま牛の涎のようにダラダラやったら経済が持ちませんし、国民の生活も持ちません。必要な地域だけまずバサっとやれば最小の費用で国難を乗り切れます。国を経営する観点が必要です。
給付については公平性や政策実行のスピード感の担保の観点から様々な議論があることは理解していますが、世帯収入が平均以下の国民を対象とした給付の場合は7.8兆円、世帯収入が300万円を下回る世帯の国民に絞れば4.2兆円の財源があればよく、本当に必要なところへスピード感とメリハリのある資源投入を進めるべきです。