両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信
私が昭和49年に旧両備運輸(現両備トランスポート)に帰ってきて、ほぼ同じ時に乗務担当社員になってトラックを運転してくれていた佐藤哲郎さんが、何と45年間連続無事故を達成されて表彰を受けました。
30年間無事故が4名、25年間無事故5名、20年無事故6名と素晴らしい運転の達人が現れて、2020年の恒例の両備トランスポートの労使による無事故表彰式は驚きの連続でした。
私が帰ってきた頃の旧両備運輸のトラック部門は、事故の百貨店の如く、事故、事故、事故の毎日で、有責事故率は10万km当たり0.44件で、これは、バス会社の10倍ぐらいの恐ろしい数字で、運転手さんは「走っていれば事故は当たり前!」とうそぶき、「国から免許証をもらってるんだから、会社の安全教育なんかいらない!」というありさまで、全く安全教育はなされないままでした。
当時は労働組合も全く教育には無関心で、毎晩遅くまで職場集会をしてやっと両備バスの運転手教育に居候して安全教育を始めました。
安全教育以前に社員としての教育、人間としての礼儀や躾が全くできていないので、まず「心の教育」、人間性の勉強ということで「ニューモラル」という月刊の小冊子を購入して、職場で輪読会を並行して実施しました。
その後、運転技術や物流技術、サービスや生産性を上げることをプロとして自慢できる会社にしたいということでSSP-UP運動を開始し、昭和60年には西鉄さんの集団力学研究所を模範にして「両備教育センター」を創立しました。
その当時の西鉄さんは10万km当たり0.03件という事故の少ない、安全で日本一ともいえるバス会社で、「バス会社に負けない安全な物流企業」を目指して頑張りました。そのころ両備バスも西鉄さんに負けず劣らずの安全なバス会社でした。
集団力学という心理学を取り入れた安全教育は、当時最先端とも言え、「人間はあたかも知っていることを行動していると錯覚を起こす動物である」ということから、知識と行動を一致させて安全を図ろうというものでした。
そして現在の両備トランスポートの安全率は10万km当たり0.03件以下を2年間切る偉業を成し遂げて、まさに「バス会社に負けない安全な物流企業」を達成することができました。
一方バス事業の方は、規制緩和でバス業界の体質が弱り、乗務担当社員の給与水準が下がってしまったこともあり10万km当たり0.1件を切れるかどうかという水準まで落ちてしまいました。両備グループの中でもバス会社より両備トランスポートが3倍も安全な業態になっています。
さて、この安全のノウハウで今度は「両備トランスポートより安全なバス会社」を目指さなければなりません。