(一社)岡山藩郡代 津田永忠顕彰会
代表理事 小嶋光信
「瓢箪から駒」と言いますが、世界文化遺産を目指していた津田永忠の土木遺産群の一部である倉安川と百間川が、「世界かんがい施設遺産」として令和元年9月4日に見事、世界遺産登録されました。
この快挙の原点は、元岡山県農林水産部長で(一財)岡山農山村地域研究所 代表理事の村上進通さんのアイデアで、昨年1月30日に来社されて倉安川を世界かんがい施設遺産に登録申請したいという提案から始まりました。
実はその時は「世界かんがい施設遺産」なるものがあるとはつゆ知らず、調べてみると世界文化遺産とは異なり、インドのデリーに本部がある国際かんがい排水委員会(ICID)が歴史的かんがい施設の理解と適切な保全に資するために認定・登録する権威のある世界遺産であることが分かりました。厳しい審査を経て登録されるのは、建設から100年以上経過し、歴史的・技術的に価値のあるかんがい施設です。
平成19年に岡山藩郡代 津田永忠顕彰会が提唱し、岡山県が「近世岡山の文化・土木遺産群-岡山藩郡代津田永忠の事績」として世界文化遺産登録を目指しましたが、当時、土木遺産が世界文化遺産という認識が国に薄く、辛うじて「閑谷学校」が世界教育遺産としてスタンバイされることになりました。
もう津田永忠の真骨頂である土木遺産の事績では世界遺産登録は無理かと思っていたところにまさに「目からウロコ」で、即座に顕彰会としてご支援・協力をお約束するとともに、倉安川と吉井水門(閘門)だけでは世界規模としてはやや小さいので、世界のモンスーン地帯では最大級となる1,900町歩という沖新田の灌漑や排水機能をも兼ね備えた、一石二鳥、一石三鳥ともいえる卓越した治水・土木工事でもある百間川も追加されてはどうかと提案して今日を迎えることになりました。
申請にあたっては農業分野の権威である千葉喬三先生を会長に、関わりのある団体方とともに「倉安川・百間川 世界かんがい施設遺産協議会」を結成し、実質的な副会長の村上さんが事務局兼よろず承り係として頑張られて勝ち得た素晴らしい成果です。申請にあたっては学術的な面でのチェックに岡山大学 名誉教授の馬場俊介先生にもお力添え頂きました。
まさに倉安川が開削されて340年の記念すべき年に、地元民の力が結集しての大きな、大きな賜物を得ました。
9月4日にインドネシアのバリ島にあるヌサドゥアコンベンションセンターでのICID第70回国際執行理事会席上にて、正式に認定登録され、レインダース会長より村上さんとご一緒に登録証等を頂いて帰ってきました。
世界かんがい遺産に登録された理由は、倉安川・百間川のかんがい排水施設群が「作物の生産性を向上させ、地域の農家の生活水準を向上させるための埋め立て地として素晴らしい例として」ということで広大な沖新田などの大干拓が評価され、また津田永忠が目指した「農民の苦しみを救う」ことが「地域の農家の生活水準を向上させた」という表現で高く評価されたことが値千金と言えるでしょう。
これから更に、津田永忠の偉業である岡山県の「閑谷学校」を世界教育遺産に、「岡山後楽園」を世界文化遺産として登録実現できるよう、その可能性を目指して再出発です。