両備グループ代表 兼CEO
小嶋光信
ベトナムのホーチミン市に続いてミャンマーのヤンゴン市のティラワ経済特区に、約37千平米の4温度帯の冷凍・冷蔵倉庫含む大型の物流基地が完成しました。アジアに最新鋭、最先端のコールドチェーンのネットワークを創ろうという30数年来の夢を実現できて大変嬉しく思っています。
そして今日のこの竣工の日に、ミャンマーの皆様やミャンマーに進出されている世界の企業の皆様にこんなに大勢いらっしゃっていただいて感謝に絶えません。
30数年前、これからはアジアの時代だと想い、両備グループとしてどのようにアジアの発展に寄与するかの現地視察をしていました。
ベトナムやシンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアなどを歴訪し、30数年前に古き良きヨーロッパ調の町並みの風情が残ったミャンマーの古都ヤンゴン市を訪れました。
まだまだ経済発展の遅れた国でしたが、シェッダゴン・パゴダを訪れた時、その厳しい生活の中で、パゴダ(寺院)に金箔を貼り、祈っている人々に出会って心が熱くなりました。
経済的に豊かになった日本では、宗教心や人情が薄れてしまいましたが、ミャンマーの人々は決して生活は豊かではないのにみんなの幸せを願って信心する姿を見て心を打たれたのです。そしてこんな素晴らしい心を持ったミャンマーの人々のために何かをしたいと気持ちが湧いてきました。
そこでヤンゴン空港の近くに開発されたミンガラドン工業団地に物流で進出する計画をしましたが、政変で断念せざるをえませんでした。
その後、ミャンマーにご縁があったのか、知人から岡山市へのミャンマーの留学生に社宅を貸してあげて欲しいという依頼で、ミヤミンハンさんとお兄さんのタイジーさんとの交流が始まりました。それ以後25年が経ちましたがタイジーさんやミヤミンハンさんとの交流はずーっと続いています。
この4〜5年前からミャンマーの民主化の流れが出てきて、再度夢を果たすべくヤンゴン市を訪れました。ヤンゴン市内では公共交通の遅れが顕著で、交通混雑で第2のバンコク市内の様相を呈していました。
鉄道や交通の省庁からの要請もあり、市内のLRT化や9号線のバス路線近代化のご相談や市内の開発計画などの提案の努力をしていましたが、政府を相手に民間だけではなかなか上手く進みませんでした。
そこでアジアの担当を松田敏之副社長として再度分析の結果、ミャンマーでも冷凍、冷蔵のコールドチェーンが未発達で、多くの輸出産品の廃棄や品質劣化から買い叩かれて安くしか輸出できないなどの問題点が明らかになりました。
通常は国の発展に合わせてコストの安い規模の小さな物流進出を計画しますが、これでは地元の物流業者の方々との競争になってその国の物流技術の発展に寄与することにはなりません。そこで両備グループとしては、敢えて技術力が高く投資規模の大きな冷凍冷蔵倉庫への投資を決意してアジアのコールドチェーンのネットワーク造りを企画しました。
ホーチミン市に続きヤンゴン市でも物流基地の適地を探していたところ、ティラワの港湾整備とその背後地の開発が日系企業と日本政府の協力で行なわれるとの情報を得て、このティラワの経済特区で約5ヘクタールの土地を利用させていただいて進出できるチャンスに恵まれました。
ミャンマーの経済発展状況からは少し早すぎるかもしれませんが、冷凍・冷蔵倉庫を含む大型物流倉庫の分野に進出を定め、遅れている冷凍・冷蔵技術の分野でお役に立とうと思いました。
設備については下記のように最先端、最新鋭を心がけました。
1. 約3万7千平米の常温、定温、冷蔵、冷凍の4温度帯のフレキシブルな保管ができ、ランプウェイで2階までトラックが上がれるミャンマーにおいて最新鋭で近代的な鉄筋と鉄骨の冷凍・冷蔵倉庫を目指しました。
2. 冷媒としてフロンを使わず、環境に優しく省エネ冷凍システムとして最新最高率のシステム(NH3/CO2システム)を導入し、年間で125トンの二酸化炭素の排出を削減します。
3. 安心して冷凍・冷蔵の保管ができるように48時間停電してもバックアップできる補助電源を設備しています。
4. 貸しオフィスの需給バランスがタイトなヤンゴン市において、倉庫を利用していただいたお客様の仕事の効率化で便利なようにオフィスも6室併設しています。
5. ミャンマーにおいて初めてとなる倉庫及び在庫を管理するITシステムを導入しています。このシステムは、お客様のERP等のITシステムとのデータインターフェース可能な倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)です。
両備グループとしては、かなりの先行投資になると思いますが、ミャンマーにおいて初めてとなる様々な温度管理の冷凍・冷蔵倉庫ができることによって、より鮮度を保ち、より清潔に付加価値を維持して農水産物を輸出することでミャンマーの産業の発展に貢献したいと思っています。
また、温度管理の必要な輸入品を得ることで人々の暮らしを少しでも安全な食生活として豊かになる一助になればと思っています。
この事業の完成は、多くの日系並びに現地の企業の方々のお力添えの賜物です。心から感謝の意を表したいと思います。
[設備概要]
延床面積 36,695㎡
常温倉庫 14,098㎡
定温倉庫 1,160㎡(2室)
冷蔵倉庫 1,523㎡(3室)
冷凍倉庫 1,901㎡(3室)
文書保管 534㎡
チャンバー、パスウェイ 853㎡
事務所他 事務所1,485㎡(8室、共用部含む)
車両バース 40箇所(1階20箇所、2階20箇所)
両備グループ