両備グループ
代表 兼 CEO 小嶋光信
両備グループ運輸安全マネジメント総括大会が11月17日に開催されました。両備グループの安全マネジメント委員会は松田敏之委員長のもとに3年目を迎え、両備グループのトランスポーテ―ション&トラベル部門とその関連の7部会で構成されています。今大会は同委員会主催による一年間の振り返りと来年度への取り組みを決める最重要な運輸安全マネジメントの大会です。
今年も国交省の主任運輸安全調査官の松本さんの講演で、最新の国交省の安全への取り組みを学び、全日空の安全推進センター副センタ―長の木原さんから全日空の安全への取り組みを中心に大変有意義な講演をいただきました。
言うまでもないことながら安全に終点はなく、エンドレスな取り組みをすることがまさに安全マネジメントです。両備グループでは、平成28年度に携帯電話使用に関する不祥事が起こり、両備グループの安全神話がもろくも崩れさるかと思われるほどの大激震が走りました。
今年はその反省から、年初に経営方針として「初心に帰り、安全意識の再構築」を掲げ、3月には「交通三悪・徹底追放」へ危険運転となる居眠り運転を加えて「交通四悪」とし、徹底追放では生ぬるいとして「絶対禁止」とし、「愛の鞭」として労使で厳しい懲罰とする啓蒙活動と意識改革を図りました。
平成29年度の「交通四悪」は、
1.飲酒運転・酒気帯び運転:絶対禁止!
2.個人用携帯電話・スマホルール違反:絶対禁止!
3.免許証不携帯:絶対禁止!
4.居眠り運転:絶対禁止!
です。
しかし、依然として一部の乗務社員にはスマホ操作などを安易な気持ちで行なう人がおり、8月に「ヒューマンエラーの壁に挑む!」で個人の規律の緩みを指摘し、朝礼や点呼で「交通四悪」の「絶対禁止」を唱和してもらって、日々更なる意識付けを行なっています。
日本の交通の安全意識が低いのは、
1.「赤信号みんなで渡れば怖くない」のように身勝手な判断が根底にある。
2.大型車両も運転操作が乗用車並みに簡単になり、運転に専念せず、他のことを考えながらのプロとはみなしがたい運転が散見される。
3.乗務担当社員も事故の相手も高齢化して、特有の「良く見えていない」、あるいは「判断の遅れ」によるケースが多く、今後ますます増加する懸念がある。
4.交通事業従事者の業界平均賃金が他産業の平均より1百万円前後低いことなどで、人材面でのレベルダウンの懸念が大きい。
5.加えて、給料が低いことに反比例して、社会的責任が重く、人材面の供給不足による職場の余裕のなさも諸問題の背景にあると言える。
等々が原因と分析できます。
今後も引き続き、「ヒヤリ、ハット」や、危険予知トレーニングでの教育・訓練はもちろん、「点呼・健康:ご安全に」などの点呼時の安全管理ソフトや確実な整備点検、バックセンサーなどの安全チェック機器をはじめ、ドラレコでの分析等々、ITも駆使して、あらゆる面から安全性を高める取り組みをしていきます。
しかし、運転をするのはあくまでも「人」です。
「これでプロか?」と思えるような「前を見ないで運転しての事故」や「バックモニターを見ないでのバック事故」などの「知っていながら守らないヒューマンエラー」が撲滅できない理由は何か? これほど真面目に取り組み、幹部も現場も神経質になるくらい努力しているのに未だにルールを無視してスマホを操作するなど、極簡単なルールも守られないことに大いに苛立ちを持っていました。もう、やっても、やってもキリがない不毛な努力かと思われていたことに解決へ向けての一筋の光が見えはじめました。
それは、世界屈指の調査会社・ギャラップの「エンゲージメント」調査結果です。
世界139ヵ国の「エンゲージメント=熱意を持って仕事をする」会社員がどれくらいいるかという調査で、何と日本はビリのグループに入る132位だったのです。
日本も中国も、熱意を持ってやる気の社員が僅か6%で、やる気のない社員が94%だったのですが、怖いのは日本の会社員はその94%のうちの24%がやる気がないだけでなく、会社に害をおよぼす社員だというのです。そして、社内で起こる問題や事故のほとんどはこの害を及ぼす社員が引き起こしているという分析結果もあり、びっくりしました。
昔は世界一の会社思いで、ロイヤルティのあった日本の会社員が、今は、中国より悪く、熱意ある社員がアメリカ(32%)の5分の1以下とは実に情けない体たらくです。働かない上に文句言いで、会社に悪さをするとは最悪です。お給料をもらって働いているのに、これは会社に対してだけではなく、真面目に働く仲間への冒涜です。気に入らなければどこでも働く自由があるので、気に入った会社で働くべきです。
しかし、この意欲のない社員が増えた原因は本人の責任もさることながら、その一因は上司にもあり、働く意欲付けや、やりたい仕事をさせてあげるなどの部下とのコミュニケーション不足を解消することで、アメリカは劇的に改善したそうです。
このエンゲージメントを高めるために、もっともっと運行する乗務社員、運転士、船員に上司が寄り添って「仕事のやりがい」や「仕事の誇り」をシッカリと自覚してもらうと同時に「社員の幸せ」を考え、生活も充実できるように勤務状況が配慮されているか等の「血の通った管理」が必要です。
どうも、事故が起こった原因分析や様々な対策を講じていますが、幹部層ばかりが集まって会議をして、肝心の現場の皆さんの心に沁みる教育や方針、新しい心得(決まり)としては伝わっていないのではないかと危惧しています。
乗務社員、運転士、船員という現場の皆さんに焦点をあて、「ワークショップ」スタイルで各人が考えながら安全を遂行していくように会議や対策をしていくように変更していきます。
基本は、「決まり、規律をキッチリ守る」を安全の大項目として、
1. 前を見て走る
2. 当たったら止まる。異音がしたら止まる。異臭がしたら止まる
3. 人命第一
今後は、万が一の「事故が起こった時の対処方法、心の問題の訓練と研修」を義務付けていくと決めていますが、更に徹底します。
どんなに素晴らしい安全運動をしても、いつまでもいる「一人の決まりを守らぬ社員」や知っていても「ポカミス」をするという現場の現状を考慮して、何とか新鮮な取り組みを!ということで、来年度から昔、一世を風靡した「バイオリズム」を採り入れていきます。人間には一定のリズムがあり、心身の状態を表す身体(P)、感情(S)、知性(S)の3種類の波の周期からその日のコンディションを判断する手法です。当たるという人、当たらないという人、真逆だったという人と多くの意見はありますが、当たるか当たらないかより、今日、自分はどんなコンディションにあり、どう気を付けようかと一人ひとりに考えてもらえるように取り組んでみたいと思います。
マンネリにならず、一歩一歩「日本一安全な運輸企業」を目指して、職場の皆で一緒に頑張りましょう。
両備グループ