一般財団法人 地域公共交通総合研究所 理事長
両備グループ 代表 兼CEO
小嶋光信
井笠鉄道の経営破綻を救済したことに続いて、井笠地域の公共交通活性化のために「市民に寄り添う公共交通プロジェクト」の準備会を今年1月9日に発足して以降、これまで正式なプロジェクトのキックオフができるよう目指して活動していましたが、今日7月7日、無事に発足の運びとなりました。
確かに井笠鉄道の経営破綻を、私の救済方式である「公設民託」によって井笠バスとして再生しましたが、少子高齢化の流れの中、少しは改善できているとはいえ、お客様の逸走は相変わらず2~3%続いています。それを支えている行政も財政事情は苦しく、何れまた膿む恐れがあり、早期対策が必要です。
私が数々の再生を通じて提唱し、携わった「地域公共交通活性化・再生法」や「交通政策基本法」で大事にしたことは、
1. 今までの交通事業者による孤軍奮闘型の地域公共交通から、国、地方自治体、市民と交通事業者が一体になり、地域の活性化につながる公共交通として、連携して維持発展させていく。
2. 国はその法制化と財源を確保する。
の2点です。
これからの地域公共交通は国、地方自治体、市民と交通事業者が一体になり、維持・発展していかなくてはなりません。
鉄道部門では、当・両備グループの和歌山電鐵で、市民団体の「貴志川線の未来をつくる会」や行政の皆さんと一体になり、「たま駅長」や水戸岡デザインの可愛い電車たち、多くのイベントで、従前の年率5%ものお客様の逸走を改善し、10年間で20%近く乗客を増やすことに成功しましたが、路線バス事業ではどうすれば良いのかという良い見本がありません。
お蔭様で、井笠バスも幾多の困難を乗り越えて、行政と一体になりながら再建を果たし、今日を迎えていますが、まだ、今後どのような形で地域の発展につながる公共交通へと進化させるかという課題が残っています。
井笠バスにおいても何としても乗客の逸走を止めて、お客様を増やしたい。この努力を市民と行政の皆さんを巻き込んで進め、今年1月、地域の生活交通として、「乗って残そう井笠バス!」を合言葉に「市民に寄り添う公共交通プロジェクト」準備会を発足したのです。
準備会のミッションは、『如何に乗っていただけるように創意工夫して、地域の活性化を図り、「乗って残そう井笠バス!」を実現するか』でしたが、この半年の準備期間に行政や市民の皆さん、経済界も参加下さって、数々の取り組みができた上、お互いに協力してやっていこう!という機運がみなぎってきたため、名古屋大学の加藤教授を委員長に、準備会メンバーをプロジェクトメンバーに改組して、正式にキックオフしました。
このプロジェクトの内容は下記の如くです。
1.期間は2018年12月末まで
2.ミッションは準備委員会の時に示した「乗って残そう井笠バス!」、「地域活性化」と「多様な取り組みで総合的な地域の足を確保する」の3つ
3.プロジェクトの数値目標は、「2~3%の逸走を止め、プラスに転化する」ための施策を具体化すること
4.このプロジェクトの主宰は当・一般財団法人 地域公共交通総合研究所とし、財源は「両備ワッショイ創生1%基金」とすること
加藤教授にプロジェクト委員長をお願いした理由は、学の分野で最も現場を歩き、地域公共交通の事情を把握して活動されている方であり、国の交通行政にも深く関与されている実績と、何よりもご本人自らがボランティアで何とか井笠バスの現場で有効な手立てを示したいという意欲が素晴らしかったことです。
このプロジェクトで持続可能な地域公共交通の有効な試みを開発できれば、好事例として全国でお困りの地域公共交通の再生に活用いただけるようにしていきたいと思っています。
次なる大きな課題は、交通税などの国としての「地域公共交通への財源確保」です。
プロジェクトメンバー (敬称略)
委員長: | 加藤 博和(名古屋大学大学院 環境学研究科 教授) 一般財団法人 地域公共交通総合研究所アドバイザリー・ボード委員 平成28年8月10日付で株式会社井笠バスカンパニー相談役に就任 国土交通省交通政策審議会委員ほか多数の公職を務め、 日本全国の地域公共交通の現場の課題解決において知見を活かしている |
副委員長: | 渡邉 寛人 (株式会社井笠バスカンパニー代表取締役専務) |
委員: | 渡辺 徹 (株式会社井笠バスカンパニー常務取締役) 原 雅之 (両備ホールディングス株式会社 代表取締役専務・両備バスグループ長) 礒野 省吾 (岡山電気軌道株式会社 代表取締役専務) 谷田貝 哲 (岡山電気軌道株式会社) |
事務局責任者: | 渡辺 徹 ※事務局は、株式会社井笠バスカンパニー内に置き、 町田 敏章(一般財団法人 地域公共交通総合研究所 専務理事)が補佐する。 |
広報責任者: | 山木 慶子 (両備グループ広報部長) |
2017.07.08
一般財団法人 地域公共交通総合研究所
井笠バスカンパニー