夢二郷土美術館 館長
小嶋光信
竹久夢二学会がふる里の岡山で3月21日に開催されることになり、きっと、一番喜んでいるのは天国の竹久夢二さんではないかと思っています。
この学会は、夢二生誕130年の際、髙島屋での夢二展覧会を企画して下さった帝京大学の岡部昌幸先生の提唱で、ふる里・岡山から岡山大学の鐸木道剛先生と夢二郷土美術館などが中心になって2014年9月27日にスタートしました。
個人の名を冠した学会は珍しいですが、その背景には夢二の多彩性があると思います。
夢二は詩人を志しましたが、詩人では生業ができないということで挿絵画家としてデビューし、心の詩を描きたいと「夢二式美人」に代表される今までにない画風を創り上げ、大正ロマンの旗手として一世を風靡しました。夢二は絵画作品にとどまらず、本の装幀や千代紙・封筒・便せん・半襟などの商業デザインも多く手がけて、いわゆる商業デザイナーの草分けとなり、絵画・文学・デザインという三分野を融合した研究が必要なのです。そこで「学会」が設立されました。まさに、マルチアーティストと言うに相応しい夢二の研究には幅広い分野・視点の研究者の協力が必要です。
先ほどの学会の理事会で、互選によって倉敷の大原美術館館長の高階秀爾先生が会長に、また、酒井忠康先生が副会長に選ばれ、お二人には快くお受け頂けて、シッカリした組織づくりもできました。
当日の国際シンポジウムでは、高階先生による基調講演の後、各研究者による報告や全体討議と続き、日本をはじめドイツ・シンガポール・韓国と世界各地で活躍されている研究者の皆さんから、国際的観点からの夢二の世界が論ぜられました。
また、私どもの夢二郷土美術館からは、まさに美術館創立50周年の年に夢二が渡米中に描いた通称『モントレーのヌード』を、当時夢二と親交があった宮武東洋さんのお孫さんのご好意で譲り受けて里帰りさせることができ、そのエピソードと作品も画像を交えて小嶋館長代理から披露され、大いに話題となりました。
今日の発表を学会誌にまとめ、夢二の多彩性を広く理解していただくことで、今後の夢二学会の素晴らしい研究の第一歩となるでしょう。