両備グループ代表CEOO
松田 久
ご安全に みなさん入社おめでとうございます。
社会人としての船出に、心ときめく興奮と、今までに経験したことがない不安と、周りを見たときに同世代の人たちが同じ研修を受けていることの不思議なライバル感覚、いろんな感情が交じり合っていることと思います。大丈夫です。みんな通ってきた道です。
多様性(ダイバーシティー)と基礎知識
世の中はしきりに多様性(ダイバーシティー)という言葉が重要視され、特に女性の社会的な活躍への期待感は高まっています。場合によってはダイバーシティーというと女性の社会進出を指していることもあります。私は多様性とはもっと広い意味を持つと考えています。それぞれの人はそれぞれの自分史を持ち、個性を持ち、能力を開発しています。音楽や絵画、デザインなどの芸術にたけている人、語学に優れた才能を発揮し何か国語も苦にすることなく操れる人、医学の道に進む人、工学の道に進む人、ご家族もお父さん、お母さんはこんな人、お兄さんや妹はこんな人とそれぞれ違いますよね。全く同じ人なんていないのです。ですから、多様性と言っても特別なことではなく、その人が持つ特徴を極めていけば必ずだれもが光るものを持っているのです。
ところが、社会に出て仕事を通じて、せっかく与えられた才能を磨こうともせず時間が過ぎていくのを漫然と眺めて、ああ、今日も一日が終わった、ああシンドで、後は漫然と時間が過ぎる中でボーっとして、気が付けば人生の大半が終わっている、そういう人生を送る人は冗談ではなく結構多いのです。
さて、みなさんは学生時代を通じて、試験を沢山経験してきたと思います。試験では必ず正解があるので、学校や塾で沢山の事例集をこなして正解率を高めるということをやってきましたね。正解があるのですから、間違った答えを出すと減点です。学校では多様な答えよりも同質で同じ答えを出すことが求められていましたね。つまり、同じ答えをいかに早く導き出すかという教育と訓練をひたすら続けてきたわけです。
多様性を求める時に、じゃあ今までのみなさんの教育は無駄だったのかということになるでしょうか。どうですか?今のように、多様性が重要視される世の中で同質性を求める教育は無駄だったのではないかという質問です。みなさんはどう思われますか。
これにはもちろん答えがあります。多様性が求められる世の中では同質性が何であるかをしっかりと身に着けておく必要があります。多様性が求められる中でも、同じ答えを出さなければいけないことが沢山あるのです。また、人間の脳は筋肉のようなもので、鍛えれば鍛えるほど磨き上げることができます。ですから、一所懸命勉強をして脳を鍛えた人は優秀ですし、一所懸命スポーツに打ち込んで心技体を鍛えた人は優秀なのです。
当たり前のことで、そんなに難しいことを言っているわけではありません。みなさんはピカソの絵を見たことはありますね。そう、とても感性に溢れた絵です。ではピカソが最初からああいう絵をかいていたかというとそうではありません。とても厳格な基本に忠実な基礎を勉強した上で、自分の作風を開花させました。噺家の立川談志という破天荒な天才噺家がいました。その談志がこう言いました。「型があるから、型破り、型が無いのは型無しだ。」古典落語をしっかり修行して型を自分のものにする。そうして型を超えて自分のオリジナリティーを発揮するから型破り、勉強もしないで自分勝手にやっている芸人は形無しで、滅茶苦茶だ。」
分かりますね。そうです。みなさんは社会に出て両備グループに入社しましたが、基本中の基本として全員が共有しなければならないことがあります。
両備グループには「忠恕 真心からの思いやり」という理念がある。社会正義、お客様第一、社員の幸せというグループ経営方針がある。われらの誓い、両備真訓という社是がある。知行合一、すぐやる・必ずやる・出来るまでやるという行動規範がある。5つの執行責任、会社の発展=お客様の喜び×社員の生きがい=社員の幸せという経営の方程式がある、健康×能力×やる気プラス夢という社員の幸せの方程式がある。安全宣言、SSP-UP、5SAF ホウレンソウ運動がある。そして、今年の経営方針「忠恕の実践、夢の実行」スローガン「心ときめく仕事をしよう」があります。
その上で、社会的な責任を果たしていくための法律の知識、財務の知識、マーケッティングの知識、マネージメントの知識、それぞれの職務を遂行する上で必要な知識、資格、語学力等々、基礎知識として身に着けておかなければいけないことは山ほどあります。こうしたことをみなさんは学校で習ったわけではありませんから、これから身に着けていかなければなりません。それも出来るだけ速くやらなければなりません。
みなさんが船出をする社会には答えがないことが非常に多いのです。ですから、真っ当な道を歩こうとすると、あらゆる知識、知恵を皆で出し合わないといけません。信頼できる仲間は両備グループの理念、心を分かっている人でなければならないのです。
一番肝心なことは、男女関係なく、基本としての同質性を出来る限り早く身に着けて、その上でみなさんがそれぞれ持っている個性を発揮して、道を究めて、両備グループとしての多様性を実現しなければなりません。それがダイバーシティーです。
一度しかない人生
この世の中には絶対正しい真実があります。生きてくる時代、場所を選ぶことはできませんが、生きてきたら結果的にいつかは死ぬということで、死ぬまでの間の長さの差はありますが、生きるということです。それが唯一の真実です。
ところが生き方は、それぞれです。どういう人生を生きていくかは、みなさんの努力に大いに影響されます。ラッキーとツキだけで生きているように見える人がいますが、実は努力の結果、あっという間に目の前を過ぎていくチャンスを掴んで前に向かって生きている人が多いのです。漫然と生きていては、それはできません。何がチャンスなのかも分からなければチャンスを掴むこともできません。何かを選び取る。みなさんは人生の中で多くの選択をして生きていきます。もちろんこれまでも、学校を選び、そして両備グループを選びました。ほかの会社に就職したみなさんの友達は別のものを選んだわけですから、自ずとみなさんとは違った社会での景色が見えているはずです。理念も方針も違う会社ですから、同じ業種であってもまるで違います。
一度しかない人生を最後に振り返った時に、ああ、私の人生は素晴らしかったと実感したいではないですか。みなさんは、その人生の中で大切な一ページを今開こうとしているのです。それぞれの人に平等に与えられているものは時間です。その時間をどういうふうに使うかは、みなさんに任されています。その時間を有効に使ってもたらされる結果は自分で責任を取らなければなりません。さて、みなさん、どうしますか。
今始まる社会人としての人生を最大限に価値が高いものにしていきましょう。努力あるのみです。たいていの場合は、やらないからできないと愚痴を言うのであって、やれば必ず」できるのです。何故ならできるまでやるからです。
初心忘るべからず
これだけ言えば、分かってもらえると確信していますが、実はそのうち忘れてしまうのが人間の性なのです。自分は強いなんて思っていても、弱い自分を知らないだけで、人間には必ず強いところがあれば、弱いところもあるものです。入社して一年、二年後輩ができて仕事にも慣れた頃、初心はどこかに忘れて、ただ毎日が忙しく過ぎている自分を発見することがあります。発見したら〆たもので、覚醒すれば良いのですが、ともすると気が付かないうちに初心を忘れたまま時間だけが過ぎて、仕事が面白くなくなっている人もいるのです。それは自分の責任なのです。
今、みなさんが緊張して社会に船出し、胸に抱いている大きな志、その初心を必ず持ち続けてください。
最後にみなさんの大いなる人生の門出を心からお祝い申し上げて社長の祝辞といたします。
両備グループ