両備ホールディングス(株)
社長 小嶋光信
和歌山電鐵のスーパー駅長たまちゃんの二番煎じと思うでしょうが、これもまたビックリするような偉業です。
物流部門の両備トランスポート岡山のトラックは約60台あるのですが、この社員たちの登用で、なんと2年間もの無事故を達成して、現在も継続中です。その上500台以上ある両備トランスポート全体でも重大事故が無しというだけでなく、10万キロあたりの有責事故は0.03件と、安全が売り物のバス業界を凌ぐ数字で、事故の多いトラック業界では、驚異の安全記録を樹立しているのです。
偶然だろうと思われるでしょうが、彼らが2年前に「安全管理夜回り担当委員会」の委員長、副委員長に任命されてからなんです。
経緯は次の通りです。2年前私が小豆島に行くため新岡山港に向かう際、素通りしたら社員も寂しかろうと両備トランスポート岡山の事務所に激励にと顔を出して、帰りかけた時のことです。ドアを開けると茶色の縞模様のネコと黒ネコが2人並んで私の方を向いて座っていました。私が近づくと茶色のネコがゴロリンとお腹を向けて寝転んだので、お腹を撫でてあげて、社員に「どこのネコか?」と尋ねたときから物語は始まりました。2人は野良猫で、運転手さんたちの食事を食べに来るので、みんなに追い払われていると言うのです。きっと飼い猫だったのが何かの事情で港に捨てられたのでしょう。当時すでに駅長たまちゃんが活躍を始めたときでもあり、可哀想なので社員に登用することにしました。
お仕事は夜ウロウロしていたというので、この社員たちのために「安全管理夜回り担当委員会」を作って、茶色の社員をトランスと名付けて委員長に、黒色の社員をポートと名付けて副委員長に任命しました。案の定2人は運転手さんたちと事務所のアイドルになって可愛がられるようになり、運転手さんたちは、出がけに2人を見つけると「安全運転で行ってきます」と声をかけるようになりました。それから無事故記録が始まったのです。その噂が各地の両備トランスポートのトラックの運転手さんたちに伝わって、トランスポート全社の安全運転につながっていきました。
ところが今年の秋ごろからトランス委員長が重い病気にかかってしまいました。多くのグループ社員が手術費用をカンパしてくれて、手術しましたが、11月2日に千の風になってしまいました。新しい風としての住処を立派な大理石で作って、みんながトラックで出かけるところから見えるようにしました。
これで無事故記録も終わるかと心配しましたが、それまであまり働かなかった副委員長ポートが俄然責任感を発揮して働き始めて、トランスの千の風と一緒に無事故記録を継続中です。
ここでトランス委員長の喪もあけたので、ポートを委員長に昇格することにしました。
もう一つ不思議なことは、その両備トランスポートのCOO(執行責任者)の三村専務とポートは、全く親子と言っても良いほど顔も似ており、おまけにメタボです。きっとこれからも無事故記録が続くでしょう。
辞令交付式の帰りがけ、今改修整備中の金甲山の旧レストハウスに寄ると、何とまたトラネコ2匹と黒ネコ1匹が私の前に現れ、私に声をかけてきて、山の神様に祈っているとみんな集まってきたのです。それを見ていた社員もまたビックリです。さて、また新しいドラマがはじまるのか…。
みなさんネコやイヌを大事にしましょう。最近どうも万物の霊長はネコではないかと思い始めました。