中国バス社長
小嶋光信
100年の歴史を持った井笠鉄道に代わって、今日から中国バス・井笠バスカンパニーが井笠地域と福山地域の生活路線を担当させて頂きます。昨日まで地域の足を担ってきた井笠鉄道に対して、この厳しい地域環境のバス路線を守ってこられたことに敬意を表しますとともに、引き継いだ路線を間違いなく、安全に、地域の皆さんに安心してご利用いただけるよう、粉骨砕身頑張ります!
この10月12日に全国で初めてのケースで井笠鉄道さんの破綻が発表され、わずか19日後の10月31日にバス路線廃止という極短い期間での対応になりました。岡山県や笠岡市、福山市はじめ関係市町村や運輸ご当局から路線の引継ぎを要請され、分析をし、対応策を発表し、関係ご当局と協議の後、道路運送法第21条の緊急な代替え輸送として運行対応をさせていただきました。
こんなに短い期間にこれだけのことが成し遂げられた背景には、運輸ご当局、関係行政の熱烈且つ機敏な支援があり、ご努力に本当に頭が下がりました。また、路線継続が実現できたのは、井笠鉄道から井笠バスカンパニーへ、不安と期待で来ていただいた社員の皆様、我がこととして応援してくれた両備グループの労使の皆さんのお蔭です。
これは一つの奇跡でしょう! 地域の公共交通の火を消してはいけないという皆の熱い思いが達成への力となったのだと思います。
永田町も霞が関も、国民や事業者と一体になって、国民のため、国家のためを思って火の玉になって行動すれば、日本も凄い良い国になると思います。昨年春に閣議決定され、与野党合意された交通基本法ですが、政局の混迷で未だに成立せず、予算も付けられないので、このような破綻のケースには全く対応することが厳しいのです。規制緩和で、儲からない公共交通や路線は辞めればよいという現行法を至急見直さなくては、日本の地域の公共交通は虫食いの使い物にならないネットワークになってしまいます。今回の問題を井笠鉄道の問題で終わらせるのでなく、同じようなケースが起こる可能性がある地域に経験を活かさなければなりません。
収支率50%程度という自立が全く望めない経営環境の中で、ファーストステップは道路運送法21条による緊急代替え輸送で、来年3月31日まで運行し、4月1日からは公設民託(または公有民託)型の第4条による運行で、シームレスに安定した路線をつくっていきたいと思っています。
実はこうやってスムースに引継ぎが出来ているように見えますが、26日に乗務員60名採用予定で運行継続できますとご連絡した翌日の27日、何者かの悪巧みか妨害で、30名の乗務員に断られてしまったのです。現場では万事窮すとの絶望感が走りましたが、直ぐに福山の井笠鉄道福山東営業所と笠岡営業所を緊急訪問し、実態をつかみ、両備グループの熱烈な支援で、事なきを得ました。
これは犯罪に類する業務妨害で、それも市民の足を奪うおそれのある行為なので、今後犯罪性が追求されるでしょう。
地域の公共交通はただ市民の足を守るだけでは不十分です。これから如何に地域活性化のツールとしてどのようにお役に立つようにするか、両備グループあげてこれらの地域の応援もしていきたいと思っています。
2012.11.01