両備グループ代表 兼CEO
小嶋光信
「海の七つ星プロジェクト」を、「両備グループフェア2015」(開催日:4月24(金)・25(土)日)の水戸岡鋭治さんとのトークショー「地方創生はデザイン力で~デザインが企業を元気にする~」で、サプライズとして発表した。
私は、旅客船事業の経営に携わってもう40年を超えるが、いつの日か本格的な旅客船を建造したいという気持ちが常にあった。
1988年に建造(就航)した「にゅうおりんぴあ」は、「貨物船」にお客様をお乗せするカーフェリーという、それまでのフェリー事業に物足りなさを感じていた私が、「客船」に車を乗せるというコンセプトで基本デッサンをした船で、「客船フェリー・にゅうおりんぴあ」と命名した。
私の拘りは、360度船を廻れるデッキと総ガラス張りのキャビン、客室内は基本的にホテルのサロンと同じテイストで、フランス製の生地を使ったソファーや椅子・ピアノがあり、ドライフラワーのアレンジメントを飾った豪華なものだった。「近い海外・小豆島!」と謳って、内海航路で「外航船の旅行気分」を少しでも味わってもらいたかった。
更にその気持ちを強くしたのが、以前買いたくても買えなかった、イギリスの財閥が所有していた豪華ヨットを見た時だった。この豪華ヨットは、平成の初めバブルが弾けてしばらく経った時、神戸港で売りに出されており、それを見て世界にはこんな凄い船旅の世界があるのか、と気づかされたことも今回の構想の遠因にある。
今は、山陽新聞事業社と共同で催行している両備ホールディングスの日本最大の豪華客船・飛鳥Ⅱのクルージング事業などで、些かクルージング事業のノウハウを積んだこと、クイーン・ヴィクトリアのアッパークラスの乗船体験などを通して世界の豪華客船の旅に触れたこと、そして何よりもJR九州の日本初のクルーズトレイン「ななつ星in 九州」の登場だ。果たして、欧米並みの豪華な船旅が日本で根付くものかと思っていたちょうどその時、水戸岡鋭治さんデザインによる「ななつ星」を見た。あの乗客人数ではかなり高額な運賃でも採算は難しいかもしれないが、オリエントエクスプレスを凌ぐ革命的な豪華鉄道の旅の演出で、まさに船旅に最適なコンセプトで、私の心が定まった。
水戸岡さんは、2002年の岡電「MOMO」登場以来、両備グループのデザイン顧問でもあり、昨年の暮れから彼と語り合った。水戸岡さんも「ななつ星」で一つの区切りとしているように感じていたし、何度も「小嶋さん、本気でやるの?」と気持ちを確かめられていたので、本気度を示すために、水戸岡さんの事務所をこの4月10日に初めて自ら訪問し、今回のプロジェクトの本格的キックオフとした。
このプロジェクトを「海の七つ星プロジェクト」と命名し、基本的なコンセプトを確認した。
- 瀬戸内海を巡る、九州・沖縄を巡る、日本全国を巡る沿海型の豪華ヨット部門に参入して、日本を代表し、世界で初めての豪華ヨット旅客船を目指す。
- スローライフな船旅を求めて、高速を目指さず、12ノット前後の船速とする。
- 環境に優しい電気式を検討する。
- 食は寄港する各地(ローカル)で調達することを基本に、鮨カウンターを常設する。
この船の概要は、
- 2500トン以内で、長さ80m×幅16m以内で検討する。
- 船室はオールスイートで、32室から40室までとし、お客様はMax.80人程度とする。
- スタビライザーで揺れ防止や電気式推進による騒音の低減を図り、徹底的な操船への安全性と省人化、省エネ化を図る。
- 船室はあらゆる水戸岡マジックを駆使して居住性と快適性に拘る。
- スローな船旅を楽しむオリジナルな工夫を十分に盛り込む。
という、船本体やバックヤードを含め、総額40億円のプロジェクトだ。
造船所は我こそはという熱心な提案の出来る会社を公募したい。
お互いに、この仕事を最後の仕事にしようと誓い合って、水戸岡さんと熱き握手をした。
もっとも、お互いに今まで最後、最後と言いながら何度も不死鳥の如く甦っているが…
血沸き、肉躍るプロジェクトだ!
両備グループ