地方鉄道の救世主:たま駅長に捧げる弔辞

和歌山電鐵株式会社 社長
小嶋光信

たまちゃんの訃報に接し、21日に和歌山へお見舞いに行って会った時にはあんなに元気で、快方に向かっていると喜んでいただけに、いまだに信じられません。

たまちゃんに「元気になって、再来年の1月に駅長就任10周年のお祝いをしよう」と言ったら、「ニャー」と明るく約束してくれていたので、本当に残念です。

思えば2006年4月1日、廃線の憂き目にあう寸前の貴志川線を和歌山電鐵として再生する、まさにその出発日に、たまちゃんは公道にしか置き場がなかった家を失うことになりました。

お母さんともいえる住友さんの願いもあり、何とか駅に住まわせてあげようと、たまちゃんに会って、その目を見た途端、「この子は貴志駅の駅長だ」と閃きました。

たまちゃんは、駅長就任とともに単なるマスコットではなく、イベントや取材の時には帽子を被り、改札台の上からお客様のお見送りやお出迎え、プラットフォームの見回りと仕事をしている姿がマスコミやインターネットを通じて世界中に報道され、一躍人気者になりました。

お蔭で成功する見込みがないと思われた地方鉄道に光があたり、市民の皆さんのご協力と相まって再生の道筋が引けました。

鉄道では和歌山電鐵方式の「公有民営」が新たに認められることになり、交通政策基本法の成立へと道がつながりました。

実は今日、嬉しいことがありました。フィギュアスケートの高橋大輔さんがたまちゃんに胡蝶蘭を贈ってくれました。バンクーバーでのオリンピックへ向かうときに「たまちゃんのお守りと写真」を渡して、「猫は何処から飛んでも着地するので、試合の時に「たま」を見てください」と言っていたら、見事メダルが取れたことを忘れないでいてくれたのです。

和歌山電鐵と全国の地方鉄道の救世主として、神様の意を受けてこの世に現れたかのような、たまちゃんと一緒に働けたことを誇りに思っています。

そして、たまウルトラ駅長の駅務遂行のため、ひたすら努力くださった住友のおばちゃんへ心からの感謝と、任務を全うしてくれたたまちゃんへ哀悼の意を捧げたいと思います。

たま駅長の精神は不滅です。これからも和歌山電鐵の中に生き続けるでしょう。

これからは、仁坂知事から頂いた「たま大明神」という神様になって、これまで同様、和歌山電鐵と地方鉄道の守り神として、一緒に地域公共交通のために頑張りたいと思います。

和歌山電鐵として「社長代理・ウルトラ駅長たまちゃん」の偉業を讃え、社葬をもって最大級の敬意と、真心からの愛情を示し、たまちゃんへの心からの感謝と御礼を込めて、私からの最後の辞令を伝え、永遠にその名を刻み、残したいと思います。

辞令
社長代理・ウルトラ駅長たま様
名誉永久駅長を命ず。これからも「たま大明神」として和歌山電鐵はじめ世界の地域公共交通を守ってください。
 平成27年6月28日
 和歌山電鐵株式会社 社長 小嶋光信

各首長様から弔辞をいただいております。
和歌山県知事 仁坂 吉伸様(PDF)
和歌山市長  尾花 正啓様(PDF)
紀の川市長  中村 愼司様(PDF)

20150628

20150628-2

和歌山電鐵