夢二郷土美術館 館長
小嶋光信
通称「モントレーのヌード」と呼ばれている、油彩画があることは以前から知っていました。夢二が晩年に渡米した際に描かれた「幻」の名画です。昨年、夢二生誕130年の取り組みの一環として夢二郷土美術館で立ち上げたフェイスブックに、アラン・ミヤタケさんというロサンゼルス在住の写真家から、この作品を所有しているとの一報が入りました。
早速、小嶋ひろみ館長代理が調べてみると、その方は、夢二が滞米中にお世話になった宮武東洋さんのお孫さんだと分かりました。
宮武東洋さんは大変有名な写真家で、第二次世界大戦中マンザナー強制収容所で、隠し持っていたカメラのレンズと、ドレインに使うパイプを上手く使って、収容所で木工ができる人に頼んで写真機を作り、収容所に暮らす人々の写真を撮り続けたことでも有名です。
昨年末に小嶋館長代理が訪米し、アラン・ミヤタケさんにお目にかかると、この素晴らしい画は、本来、アランさんのお祖父さんが収容所に入れられる時に接収されるところを、友人の米国人のお医者さんに預けていたことで難を逃れ、彼のお父さんの手を経て、アランさんへと大事に受け継がれてきたということが分かりました。
作品は、夢二が外遊した滞米中に描かれたもので夢二の数少ない現存する油彩画の中でも一、二と言える際立った作品で、白人の若い女性の裸婦画です。大胆なストライプの上に横たわる女性の肌が、透き通るように綺麗で、明るくキュートに描かれています。
また、描かれて80年も経った作品ですが、三代にわたって大事にされていただけあって、保存状態も良好で、それも驚きの一つでした。
当時は世界が戦争へと向かう厳しい時代でしたが、日系の方々にバックアップを受けて、新しい分野の作品にチャレンジしようとしている夢二の意欲や姿勢が感じられる作品です。
アランさんは人柄もとても素晴らしい人で、夢二の故郷にある夢二郷土美術館にこの画を里帰りさせてあげたいという気持ちを強く持っておられ、ご好意から今回の渡米で譲りうけることになりました。
私は、初めてアランさんにお目にかかりました。人懐こい笑顔に迎えられて、この作品を初めて見ましたが、あまりの素晴らしさに本当に心が躍りました。一生に一度あるかないかの夢二の名画を手に入れるチャンスに恵まれたと感謝しています。
和気あいあいとお話しするうちに、アランさんが、収容所でのお祖父さんの大事な写真機の実物を見せてくれました。木製の枠にしっかりとした手製のカメラでした。
お土産に夢二デザインの倉敷帆布ポーチとたま駅長とニタマ駅長のカレンダーを差し上げたら、アランさんの奥様は、たま駅長もニタマ駅長も良くご存知で、暫し、たま駅長の話で大盛り上がりました。その後、二人のお嬢さんとご家族でたま駅長カレンダーを囲んでの本当に楽しそうな写真を送ってくれました。
たま駅長とニタマ駅長がアメリカでも大人気で、今回の大事なお仕事にも応援してくれていたのにはビックリしました。