両備グループ
代表兼CEO 小嶋光信
あけましておめでとうございます!いろんなことがあっても、不思議なもので新しい年を迎えて家族で初詣すると、新たな気持ちが湧いてきます。
と思ったのも束の間で、元旦の16時過ぎに北陸地方で過去最大の「令和6年能登半島地震」で大災害が起こり、多くの方々が亡くなられ、また被災されるという悲しい大災害が起こりました。
また2日には日航機の羽田空港着陸時に海保機が滑走路に誤侵入と思われる衝突大炎上事故が発生し、海保機の5名の乗員がなくなるなど、よりに寄ってこの正月にという大事故が続きました。不幸中の幸で日航機の乗客・乗員は怪我人が出たものの乗員の適切な誘導で全員無事脱出という奇跡的な結末で救われたことは、世界でもその乗員の沈着で立派な事故対応が賞賛され、同じ日本の交通事業者として誇りに感じます。
能登の地震で亡くなられた方々や海保機の事故で亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りすると共に、被災された皆さんにお見舞い申し上げます。
また世界に目を転じると「一難去ってまた一難」という諺がありますが、世界的な天候異変に加え3年もの新型コロナウイルスのパンデミックとロシアのウクライナ侵攻、中国の覇権主義の問題、さらに昨年はイスラエルとハマスの戦争がはじまり、世界は紛争の火種だらけになり危うい世界となってきました。
歴史的に見ても天変地異があると飢饉や為政者に恵まれず国難が起こるという構図が見られますが、まさに今回もその構図となってきました。
かつて、冷戦時代は資本主義と社会主義・共産主義の闘いでしたが、ソ連の崩壊後は社会主義や共産主義が形を変えて民族紛争と国家による覇権主義となり、領土や資源を横取りするという様相を呈してきて、世界的な危機が本当に心配です。ほんの一握りの専制的為政者が国の名を借りて多くの人の命を奪う構図は何とかならぬかと思います。
そんなこんな世の中でも日本人としての夢と誇りを膨らませてくれたのが野球の大谷翔平選手の活躍です。上手いことに日米の時差で毎日、朝のニュースで大谷さんの活躍が報じられると、何か元気とやる気が湧いてきます。
大難局の時代ほどチャンスあり!
大変難儀な時代ですが、実は、両備グループは大難局の時にOBや皆さんの懸命な判断と努力で大きく成長してきたのです。その第一は昭和37年の旧国鉄の赤穂線が開業し、西大寺鐵道が閉業しましたが、時のトップは全社員の雇用を維持して「両備バス」として将来を託しました。昭和50年代になると、今度は公共交通の将来への不安が如実になり次なる交通事業を模索しました。旧両備運輸がバス事業と鉄軌道事業以外の交通事業に携わっていましたが、昭和48年のオイルショックで全ての事業が赤字となり、株主さんからは「大飯ぐらいの大糞たれのフェリーやトラックは止めてしまえ。儲かるタクシーだけにしろ!」と激しい非難の嵐の中、私は岡山へ帰ってきましたが、むしろトラックや旅客船事業にチャンスがあると株主さんを説得して下請けから元請けへ、岡山から全国化ということで両備バスと旧両備運輸が対等合併するまで再建・成長させて、両備ホールディングスができたのです。両備グループはいつも収益をもたらす企業がこれからの企業を育て、全体として大難局を乗り切り発展してきたのです。現在は大好調のICT部門も、まちづくり部門も、またT&T部門やくらしづくり部門も何度もあった難局時にグループがバックアップし、また助け合って今日があるのです。持ちつ持たれつが両備の強さです。
昨2023年3月期では、何とこのコロナ禍をむしろバネにして念願のグループ経常利益100億円越えを果たし、全社員に特別賞与を支給したことはまさに持ちつ持たれつの両備の真骨頂であり快挙と言えるでしょう。
現在の大難局も多くの企業がシュリンクするところをどう「ピンチをチャンスに」するか、いつも皆さんに言っている「守って勝った大将なし」で難局での危機意識をブレーキにするのではなく、逆手に取ってアクセルにして成長の道を築いてください。
昨年の経営方針は、アフターコロナを睨み、
- ルール厳守で安全・安心
- 生産性UP、売上UPでコロナ禍克服
でした。アフターコロナを乗り切る術は、生産性アップです。守りの「管理型」からどう経営を攻めの「営業型」に果敢にギアチェンジしシフトアップするかです。公共交通では営業というと一昔前までは路線とダイヤを引くのが営業でしたが、少子高齢化で旅客減少が止まらない今はどれだけ乗ってくださるお客様を増やすかが営業で、全員で時刻表を配る、地域のイベントを掘り起こすなど知恵と工夫と汗で路線の活性化を図ってください。コロナ禍で縮んでジッとしていた感覚から早く脱皮して、行動規範の「知行合一」、すなわちすぐやる・かならずやる・出来るまでやるに意識を早く戻してください。まだまだ両備グループはコロナ禍後の営業が課題です。
今年の経営方針は
- より良く働き、より良く生きる
- AI、IoT、ロボット化で生産性アップ
です。
まず、今年は2024年問題もあり「より良く働き、より良く生きる」が生産性アップの土台になるでしょう。
世の中は混沌ですが、21世紀になり両備グループが貫いてきた「忠恕」の心を大きく前面に出して「社員の幸せ」を経営の目的としたことが大きく光りはじめてきました。
人々は一体何を求めているか。皆さん、幸せな生活を求めているのです。会社の発展はその幸せを達成するための手段にすぎないのです。
社会主義vs資本主義は経済効率的には資本主義に軍配が上がりましたが、アメリカなどでは資本の論理が行き過ぎて大きな所得格差が問題になっています。「マルクスの理想とした社会主義の理想社会は、皮肉にも資本主義の日本で達成された」といわれるほど、日本は先進国の中でも所得格差が少ない国になっています。ところが、昭和60年代後半にジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた後から30年もの停滞で所得が上がらず、さらに政策の貧困から極度の円安で先進国から脱落かと思われるほど国民が金欠病に悩まされるようになってしまっています。
GNP(グロス・ナショナル・プロダクト)よりGNH(グロス・ナショナル・ハッピネス)…すなわち国民の総生産所得より国民の幸せを大事にすべきという風潮が高まっています。国連の世界幸福度ランキングではフィンランドが1位、何と日本は47位でした。「社員の幸せ」は、今、流行りの言葉で言えば「ウエルビーイング」です。
「より良く働く」ために会社は何をしてあげられるか。子育てや親御さんの介護や、家族の中に病人がいて苦労している社員の皆さんの人生に如何に「忠恕=真心からの思いやり」を発揮するかを、グループを挙げて考え、速やかに対策してください。働きやすさを作り上げることが生産性アップとやる気を引き出します。ともに働き甲斐を作ってキャリアアップして高賃金にしていくには、社員教育や人事をどのようにしたら良いかを徹底的に考えるだけでなく実行しましょう。ワーク・ライフ・バランスをとることで、そのことがエンゲージメントを高め、結果として働く意欲が湧き、生産性が上がっていくのだと思います。
人は幸せになるために努力し、生きているので、一生懸命働くだけではなく、生きる楽しさを感じ、より良く生きることが大事なのです。
いくら生産性アップ!と叫んでも生産性は上がりません。幹部の皆さんは生産性がアップするソリューションを具体的に社員に示してください。
その答えの一つが「AI、IoT、ロボット化で生産性アップ」です。特にAIは弊害もありますが、今後の生産性アップに大きく貢献するでしょう。昨年話題となった生成AIのチャットGPTはすでに身近にあるAIですが、あらゆる問題の把握や解決に大きく生産性をアップさせるでしょう。例えば、営業などで問い合わせの処理に時間が割かれているならば、チャットボットをシステムズやHD の創夢本部が取り入れて生産性アップにつなげています。
運輸・交通やサービスのように労働集約で生産性の上がらない部門は、散髪屋さんのように「髪をきる」に特化して生産性を3~4倍にしている例など、大事なスキルに特化してムリ・ムダ・ムラを徹底的に解決することが大事です。例えば乗務社員の場合、乗務することに特化して、できるだけ雑事や清掃を肩代わりしてハンドル時間を如何に伸ばすかがポイントです。
バスなどは始業・終業などのお客様の時間帯を徹底的に調べて効率が良い運行のダイヤを作り上げるなど、今までの勘だよりからAIやICT、IoTを駆使して生産性をあげることが急務です。旧態依然では生産性は上がりません。また、現場任せで生産性が上がると思うのは誤りで、ここは幹部が徹底的に知恵を絞り対応を考え現場にソリューションを与えなければ解決しないでしょう。大谷さんがなぜ野球が盛んなアメリカでトップになったか、それは弱点の徹底的な分析と対策によって、翌日には弱点を克服している分析力と努力です。
コロナ禍の後遺症を克服し、2024年問題にも対応していくためには生産性アップが必須です。
ほめ上手は𠮟り上手
交通運輸産業やサービス業はちゃんとやって当たり前の業種で、小さなミスでも叱られること、注意されることが常態化してモラルダウンしています。また最近はちょっと注意しただけで「叱られた」という気の弱い風潮が気になります。
いつも、注意するときは「7割褒めて3割叱る」、「褒めるときはみんなの前で、叱るときは一対一の個室で」と言っているように褒めるも叱るもコツがあります。逆をやってみんなの前で叱ると直るどころか、面子を潰されて反発し上司を恨むようになり全く逆効果です。
そこでコロナ禍前から「ほめ上手」教育をしようとしていましたが、昨年末やっと創夢本部を中心に努力して「ほめ上手講座」が始まりました。600名以上の幹部社員の皆さん達が聴講してくれましたが、その際にお話ししたように「ほめ上手は叱り上手」で上手く褒めるところは褒めて、ダメなところは上手に注意することが社員のモラルアップになりモチベーションが上がり、上手く叱られることで社員が伸びるのです。饅頭の餡子と一緒で、砂糖(褒める)だけでは甘さが出ず、少し塩(注意する、叱る)を効かせると甘さが際立つのです。
この「ほめ上手は叱り上手」を上手くやって、「より良く働きより良く生きる」ように幹部のみなさんは社員を導いてください。
「安全無くして会社無し」
両備グループは元々が交通運輸産業からはじまったこともあり、安全が第一です。「安全無くして会社無し」で今年こそ新交通三悪を達成しましょう。特にバスやタクシーの現場で、QC活動による職場ぐるみの交通安全が進んでいます。これは全国でも特筆すべき事柄でしょう。
安全、安全と叫んでも何も解決しないので、近年は「優しい」をテーマにしています。
- 粗い運転→優しい運転
- 粗い言葉→優しい言葉
- 粗い接客→優しい接客
「粗い心」を「優しい心」に切り替える運動もだんだん端緒についてきました。
特に今年は「お客様の着席と掴まり確認で発車!」を徹底してください。今の公共交通はご高齢のお客様が大半です。そして昨今は、少し転んだだけで大腿骨骨折、骨盤骨折等の大事故につながることが増えています。
先日、東海バスさんに乗りましたが、教育が行き届いているのか「着席、掴まり確認まで発車しない」を徹底されていて感心しました。
昨年、1.若手を磨け!、2.健康こそ全て!、3.やり切れ、やり続けろ、DX!という現場での方針を示しましたが、まだまだ幹部の意識は目先の仕事に向きすぎて今一歩です。次代の若者を育てるのが幹部の仕事と再認識してください。
U25、U30、JB制度で若手がどんどん成長し、QC活動で職場ぐるみの交通安全が進んでいます。昔は自分の職場の社員が発表するときは必ず現場の上司が聴講して応援していましたが、どうも無関心な上司が多いようで気がかりです。みんなで頑張る若手を応援しましょう。
両備の真骨頂は文化性
両備グループのイメージは「夢二」といわれるように郷土岡山のマルチアーティストである夢二の芸術の伝道師として、夢二郷土美術館と生家記念館と少年山荘で普及活動をしています。
今年の9月16日は竹久夢二さんの生誕140年であり、140年のために里帰りしたかと思われる夢二の幻の油彩画の「アマリリス」と晩年の外遊中の貴重なスケッチブック2冊も初出展される記念の展覧会が全国で開催されます。是非皆さんで大いに盛り上げていただきたいと思います。
グループをバランスの良い成長軌道へ!
2000年当初の両備グループの経営問題は収益性の低いことでした。まず年金や健康保険など両備グループで20億円くらいの赤字をもたらす制度上の問題を片付けて、収益性を高めるために企業評価の「経常利益の松竹梅」を作りました。また、両備バスに引っ張られて賃金や労働条件が抑えられていた成長企業には「能力主義的安心雇用」で、企業の能力に応じて社員を遇するように転換し、好業績のところには期末に「特別賞与」の制度を設けました。両備グループ全体も2%台から5%台の経常利益となり、アフターコロナでは企業体質の良し悪しを分かりやすくして、サステナブルに成長する企業体質とするため、昨年新たに成長性の松竹梅と、安全性の松竹梅を示しました。
<成長性の松竹梅>
松:成長率 7%以上 … 特松10%以上
竹: 〃 5%以上
梅: 〃 3%以上
<安全性の松竹梅>
松:自己資本比率 40%以上 … 熟れ松50%以上は投資促進
竹: 〃 30%以上
梅: 〃 20%以上
自己資本比率50%以上で低成長の企業はむしろ投資を促し、成長軌道に乗せなければぬるま湯につかってしまい、「社員の幸せ」にならない企業となってしまします。この3つの指標をバランスよく経営する方式に舵を切っているので、まず自社のポジションを確認し対応を考えてください。
日本も、企業も「攻める気持ち」への脱皮が必要
小沢さんが目指した政治改革から日本の混沌とした政治の混乱と経済の停滞が始まり、日本は30年にも及ぶ停滞期に入り、政治主導で行われた「規制緩和」と「既得権益打破」で競争すれば成長するという幻想がデフレ社会を助長し、少子高齢化の地方を過当競争で破壊したと言えるでしょう。今や先進国から脱落かというところまで来ています。
このままの日本では国民の幸せは達成されません。従って、下記の脱皮してギアチェンジが必要です。
1.政治は金権派閥から「どんな日本にするか」という政策集団への脱皮
お金で派閥が集まるのではなく、政策を作る集団として集まるように政治改革が必要
2.安売り合戦から付加価値競争へ=低賃金競争から高賃金産業への転換
安売り合戦が低賃金の元凶、このアメリカ型の安売り競争から産業の脱皮が必要
3.不安定なテンポラリー雇用から安定した雇用へ
テンポラリーな低賃金では付加価値へのスキルも上がらず、安心して子育てもできず、老後に不安を感じる
4.働き方改革から働きたい改革へ
働きすぎと言われた日本の労働時間は世界主要国44カ国中30位で、すでに働かない国になっている
- 公共性の強い産業の競争から協調へ
これからは公共性の強い公共交通等の産業維持や電力などの安定供給へ向けて競争から協調への転換が必要
アメリカ型を目指した戦後日本の経済・社会のシステムをスイスのようなヨーロッパ型のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)へ転換しないと、日本という国自体が亡びる危険性が高まっています。
両備グループはいち早く「忠恕=真心からの思いやり」を標榜し、「社会正義・お客様第一・社員の幸せ」を経営方針に安売り合戦の市場からミジュアリー(ミドルクラス以上でラグジュアリーなお客様)へのマーケティングに転換し、年功序列型から能力主義的安心雇用に転換しています。
もっとも「より良く働き、より良く生きる」という世界に近い企業を目指しています。
皆さんも「これはいけない」「あれもいけない」とマイナス思考に陥って停滞した日本社会のマインドコントロールに惑わされず、「攻める気持ち」と「ほめ上手」で自らも新しい働き方や生き方にギアチャレンジして、一緒に働く楽しさと生きる楽しさを創っていきましょう。
両備グループ